y_宮島
「おーい、とるよー」
修学旅行の小学生が友人にカメラを向けたまま、何度も後ずさりをしている。
宮島のシンボル『大鳥居』。
その全景をカメラのフレームにおさめるために、少年はぬかるんだ足下を気にしながら、じりじりと後ろに下がってゆく。その距離では、被写体の友人達はずいぶんと小さく写っているだろう。納得がいかないのか、少年はまだ首をかしげている。
鳥居のむこうにはおだやかな瀬戸内海が広がり、競艇場と行き交う連絡船が見える。
宮島観光の楽しみのひとつは、連絡船に乗る事だろう。この船旅、ほんの10分なのに観光気分を盛り上げてくれる。
昔、ここを『乙姫丸』という船が走っていた。それは竜の形をした極彩色の美しい木造船だった。子供たちはみんなこの船に乗りたがって、だだをこねたものだった。
絵本の世界そのままの、あの船はどこにいったのだろう。辰年にちなんで、『乙姫丸』を復活させてくれないかな。

絵図・ひのただし 文・ひのしのぶ
読売ライフ広島版2000年1月号掲載 (c) 2000, edit CUE
情報は2000年当時のもの
かお後日談