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みかんの島も、今は緑。
芽吹いた青葉が日差しを浴びて、潮風に揺れている。
港におりた瞬間、帰ってきた…と思った。この島の生まれでもないのに無性に懐かしいのはなぜだろう。
大長の町には、立派なお屋敷が多い。かつて黄金の島と呼ばれた時代が、 今ではもう手に入らない材と職人技に残されている。どれも一級の文化財。 町の人たちは今もその家を守り続けている。
「どこから、きんさったの?」
声をかけてくれたおかあさんの家は三階建ての洋館だった。 「すてきですね」と言うと、「中を見せてあげよう」と案内してくれた。 長年の知り合いのようにもてなしてくれ、袋いっぱいのネーブルとポンカンを持たしてくれた。
細い路地の奥から聞こえる子供の笑い声。縁側でおしゃべりしているおばあちゃん。 網をつくろうおじさんの背中。そして、笑顔。
この町の懐かしさは、失われた日本のこころへの憧れなのかもしれない。

絵図・ひのただし 文・ひのしのぶ
読売ライフ広島版2000年7月号掲載 (c) 2000, edit CUE
情報は2000年当時のもの