読・入船山

石畳の坂の上にとんがり屋根がふたつ。英国風の洋館は絵本の挿絵のように美しい。 この洋館の脇をぐるりとまわると日本家屋があらわれる。邸内への入口はこちらにあるのだ。 日本家屋にしては天井が高いように感じられるが、こちらは完璧な和の空間。 西洋の香りは一切感じられない。部屋は簡素で落ち着いた雰囲気になっている。
そして、洋館部へ。こちらは見事な洋の空間だ。 金色に輝く壁紙、豪華な英国風の家具、ステンドグラスをあしらった扉、ビロードのカーテン。 調度品のひとつひとつはきらびやかだが、とても上品にまとめられている。
見学ルートは回遊式になっており、和から洋へ、そして再び和に戻る。 まるで演劇の回り舞台のようで楽しい。しかし、この屋敷が軍の施設として使われ、 戦いの歴史と共に生きてきたことを思うと胸が痛む。 数々の悲しい事実をいくつも見てきたこの屋敷は、今、おだやかな余生を過ごしているのだろうか。

絵図・ひのただし 文・ひのしのぶ
読売ライフ広島版2000年11月号掲載 (c) 2000, edit CUE
情報は2000年当時のもの